第45回日本リーグ
2020-2021 Season
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  ≪一般社団法人日本ハンドボールリーグ 初代代表理事内定記者会見 会見録≫

日時:2021年2月17日(水) 11:00~

会見映像 [YouTube]
会見時配布資料
 ・葦原代表理事就任会見用資料 [PDF]
 ・代表理事選考基準について [PDF]


―司会:まず初めに、公益財団法人日本ハンドボール協会 会長 湧永寛仁より、日本ハンドボールリーグの法人化について、また、代表理事選考についてご説明させていただきます。

【湧永会長よりコメント】

皆様こんにちは。

 日本ハンドボール協会の会長を務めております湧永寛仁でございます。 本日はお忙しい中日本ハンドボールリーグの法人化を及び代表理事内定の記者会見にお集まりいただきまして厚く御礼申し上げます。
 私からは日本ハンドボールリーグの法人化、そして役員候補者選定の2点についてご説明させていただきます。

 日本ハンドボールリーグ機構は現在でもハンドボール協会の中にあり、任意団体として事務局機能を独自に有してリーグを運営しております。 その日本ハンドボールリーグは1976年に発足し、今シーズンで45回目を迎えます。 現在、全国で男子11、女子9の計20チームが戦っており、来シーズン2021-2022シーズンには女子リーグに沖縄県ハンドボール協会所属のザ・テラスホテルズが加わり、計21チームが加盟するリーグとなります。

 リーグの法人化はかねてより協会内で議論を重ねており、2019年の7月には理事会にて法人化の設立準備委員会の発足を決議し、昨年2020年の11月に日本ハンドボールリーグの法人化について正式に決定し準備を進めてまいりました。
 この日本ハンドボールリーグの法人化の目的は、意思決定のスピードを高め、スポンサー獲得・映像や肖像系ビジネスの拡大などを通じてリーグの価値向上につなげることであり、 リーグの価値向上は日本ハンドボール協会の設立趣旨である「ハンドボール競技の普及及び振興を図る」という趣旨につながり、ハンドボール界全体がよりよい方向に向かっていくと確信しております。

 役員候補者選考については今までのハンドボール界の閉鎖的なイメージから脱するため、第三者委員会による選考を選択いたしました。
 役員候補者選考委員会の委員長には第三者委員である早稲田大学の間野義之教授に勤めていただき、公平に、そして日本ハンドボール界の発展に最もふさわしい方の人選を期待し、今回葦原さんを一般社団法人日本ハンドボールリーグの初代代表理事候補者として選定いただきました。 この役員候補者の選考やプロセス基準についてはこの後の委員長から詳しくご説明いただけるかと思っております。

 葦原氏のリーダーシップのもと、これからハンドボールを始めようとする子供たちが「日本リーグでプレーをしたい」そしてハンドボールリーグを観ている大人たちが「本当に楽しい。またハンドボール見たい」と思えるように、また(ハンドボールリーグは現在ヨーロッパが中心となりますが)「アジアに日本リーグあり」と、日本ハンドボールリーグが世界のハンドボールリーグに肩を並べる、 そんなリーグになってもらうことを期待して私の説明とさせていただきます。どうかよろしくお願いいたします。ありがとうございました。

―司会:日本ハンドボールリーグ役員候補者選考委員会委員長、早稲田大学スポーツ科学学術院教授・間野義之氏より、役員選考と選考基準等についてご説明いただきます。

【間野委員長よりコメント】

 皆さんこんにちは。

 このたび役員候補者選考委員会に委員長を仰せつかりました。早稲田大学スポーツ科学学術院の間野義之でございます。
 私からは委員会組織、選考基準、役員候補者選考(主に今回の代表理事選考のプロセス)、この3点について説明申し上げます。

 はじめに、役員候補者選考委員会についてです。
 日本ハンドボールリーグ役員候補者選考委員会は諸規定に基づき、2020年12月に発足いたしました。 選考委員会はリーグ運営に直接関わらない外部有識者を半分以上で構成し、男女のハンドボールリーグ加盟チームの関係者を含んでおります。 さらに協会の方にも入ってもらう等、多様性・ステークホルダーエンゲージメントを重視した組織といたしました。

 外部有識者としては法律の専門家としての弁護士、それから会計財務の専門家として税理士、そして学識として私が入り、全体7名で構成いたしました。
 役員候補者選考については選考のプロセスに重点を置きました。日本ハンドボールリーグの代表者としてどのような要件が必要なのか、どのようなマインドを持った方であればハンドボールリーグを牽引し事業を拡大できるのか、 そしてリーグやチームの価値と収益を最大化できるかについて議論を重ね具体的な要件を策定いたしました。
 役員候補者選考委員会規程に掲載される要件のほかに、日本ハンドボールリーグの代表理事の資質として必要とされる要件を設定いたしました。

―お手元にあります資料とともにご参照ください。

① 日本国内におけるスポーツ政策の重要性や日本ハンドボールリーグが担う役割について、自らの持つ知識や見識に基づきその本質を高められること。
② 日本ハンドボール界の発展・拡大について、競技そのものや財務・マーケティング・内部統制・ガバナンスに関して、日本ハンドボールリーグに必要なものを提供し、それを構築できるプロフェッショナルであること。
③ ハンドボールの歴史や組織を理解し、有形無形を問わず過去から作り上げてきたものの中で将来に渡っても継承していくもの・進化させなければいけないものを理解し、未来に何を残すかを見極められる継続性が見込めること。
④ 日本ハンドボールリーグを成長拡大させる過程において、今の組織の課題を表面化させ、将来や未来をより良くするための改革の方法や方向性・変化するニーズに向き合い、改革の方向性や行動の指針を協会の湧永会長と共に協議・検証して進むことができること。

 以上4つの要件をベースに規定要件・経歴・実務経験・業務知識・競技面・経営者資質から成る16項目の評価基準を設け、各項目4段階で評価することといたしました。

 候補者の選定にあたっては要件に基づき候補者を絞り込み、最終的には3名の候補者をピックアップいたしました。  各項目すべて同じウエイトで評価いたしましたが、その中でも最もこれらの基準に合致し日本ハンドボールリーグの初代代表理事としてふさわしい人物として芦原一正さんを役員候補者選考委員会として選定し、日本ハンドボールリーグGM会および日本ハンドボール協会理事会へと付議させていただきました。

 この後芦原代表理事には理事候補者の選考を進めていただき、理事候補者リストの作成をお願いすることとなりますが、最終的なメンバーの確定は6月末ごろを予定しております。 もちろんこの日本ハンドボールリーグの改革を進める理事会メンバーとして人選をいただくことを期待しております。以上です。

―司会:続きまして、一般社団法人日本ハンドボールリーグ代表理事予定者であります、葦原一正よりご挨拶させていただきます。葦原代表理事、宜しくお願い致します。

皆さんこんにちは。
 まずはたくさんのメディアの方に今日お越しいただいてありがとうございます。
 いつもよりかなり多いとリーグ事務局から聞いております。選手たちが先の世界選手権でも非常に頑張っていたり、もしくはお話があった通り協会・リーグが「変えよう」という大きな気持ちがこういった皆さんの注目を集めているのかなと感じております。今日は就任受諾の理由と、また今後どういったことをやっていきたいかということの2点をお話しさせていただこうと思っております。

 まず就任の受諾させていただいた理由ですが、最初お話をお伺いした時は正直悩みました。というのも、(今までバスケットボールにいた私にとって)ハンドボール界は何かと内輪もめしているような印象が正直あったからです。今回受諾させていただいた理由は大きく2つございまして、1つは業界全体の大きな変革意欲というのを感じたからでございます。具体的に申し上げますと、協会にあったリーグ運営機能を独立化させ、かつ最初のリーグの代表理事を選定するにあたり極めて公正なプロセスを経て今回ご指名いただいたというところにあります。

 公正というのは第三者の役員候補者委員会を立ち上げて、かつ選考委員長には本当の意味で「第3者」の方が立ってその方を基準に議論したとお伺いしております。過去のスポーツ団体の役員候補・代表理事の決め方には色々なプロセスややり方がありましたが、ここまで大胆に外部の方の意見を聞いてかつ公正に(何名か候補者がいらっしゃったと伺っておりますが)検討されたということに私は非常に驚きを感じ、「ハンドボール界がここまで本気で変わっていこうとしてるのか」という思いを強く感じたので、最終的には「私でよければ引き受けさせていただきます」と回答させていただいております。

 もう一つの受諾理由は、ハンドボール界の潜在能力の大きさをずっと感じていたからでございます。競技人口も9万人近くおり、他にもさまざまな数字を見ております。入場者数やSNS関連の数字はざっくり言うとバスケットボールの大体5分の1ぐらいかなという印象です。それに対して、今置かれているビジネスや選手の環境を考えると、伸び代が極めて大きいかなという風に思っております。世界でもハンドボールは皆さんご存じの通り億単位の年俸を稼ぐ選手がいたり、ヨーロッパを中心に人気のスポーツでもあったりするので非常にポテンシャルは大きいと感じております。
 そして潜在能力が大きいと思うもうひとつ大きなポイントは、アリーナスポーツであるという所に非常に大きな魅力を感じているからでございます。
 アリーナで、かつ団体スポーツは非常にビジネスの伸びしろが大きいと私はずっと考えております。団体スポーツは個人スポーツに比べ、権利関係に関して柔軟に対応しやすい点もございます。
 またスタジアムとアリーナを比較して考えた時に、今世界では球団と球場をセットで経営する「ソフトとハードの一体型経営」が盛んに行われているのですが、スタジアムよりもアリーナの方が非常に経営効率がいいと、私が野球やバスケットボールを含め色々なスポーツを見ていて感じるところであります。そのため、よりアリーナスポーツが盛り上がっていけば、よりアリーナビジネスが発展していくだろうと考えております。そういう意味で極めて大きなポテンシャルを持っていると感じていたので、そういったこともあり今回受諾させていただきました。

 あと今後について、「プロ化どうするのでしょうか」であったり「どうやって稼ぐんですか」のような質問が沢山あるかと思います。ビジネスとして成り立たせるのは大事だということは、当然認識しているものの、いきなり大きく収益化することがすぐできるかというと、簡単ではないと思っております。まずその前にやるべきことがいくつかあります。まず一つは具体的に今起きている課題整理をきっちりやらせていただきたいです。その後はやはりガバナンスについて、誰が決めてどこに責任があるかというルールを全てにおいて明確にすることが大事だと思っております。その上でビジョンなどを明確にした上で、ようやくパートナーさんたちを探しに行けるような状況になると思うので、その前提をきっちりしていきたいと思っております。具体的に課題を整理するところは(まだチーム関係者の誰ともお会いしていないので)、4月に就任した後に全チームをまわり各チームの代表者の方々としっかりお話させていただいて、どんなことに課題認識があるのか、またハンドボールの強みを聞いて、課題の優先順位をつけた上で物事の解決を進めていきたいと思っております。

 「ルールを作る」ということについて具体的に申し上げますと、定款・規約・規定及び会議体についてきっちり作り上げていきます。やはり曖昧なものをやっていくと全てが曖昧な意思決定になっていくので、過去の経験をもとにまずきっちり作らせていただこうかなと思っております。
 価値を高めるところの具体性においては、ビジョンやバリューの策定、データを含め事業の基盤のプラットフォームを作っていく、そういったところがすべての価値を高めていくと思っております。基盤を全て整えた上で稼いでいきますし、稼いでいくようになれば普及や強化に積極的に投資できる環境になると思います。私としてはなるべく早く(事業の基盤を)立ち上げたい気持ちもあるけれども、いい意味で焦らずじっくり進めていきたいかなという気持ちもございます。

 ガバナンスに関しては、スポーツ団体の難しいところとして基本的に全会一致で物事を決めないと進まないような団体が多かったりします。当然全チームの意見は尊重しつつも、やはり民主主義なので、ある程度多数決の議論も時として必要かもしれないですし、それに基づく根拠やビジョン等も提示しながら進めていければと思っております。理事会とか総会に関する仕組みはJリーグ・Bリーグの仕組みがかなりよくできていると思うので、準じながら進めていければと考えております。また「いい緊張関係が大事」というのを私は今後チームの皆さんに言おうかなと思っております。当然、皆さんの話は選手含め尊重はするのですが、時としてやはり正しくジャッジする必要があるでしょう。私の最大の強みはどこの色にも染まっておらず全ての事実をフラットに見てものが言えるところであり、最終的に判断できる所は自分で判断しようと思っております。そういう意味においては必ずしも全会一致にならない可能性があるかなとは思っております。その時にはチームの皆さんからすると、当然不満も出てくるときもあるかもしれないんですが、逆にチームの皆さんは2年おきに理事を選任する議決権があります。最終的にはそういった権利もチーム側にあるので、お互いの権利を明確にしつつ「良い緊張関係」を持っていく、とはいえ目指したい世界は必ず一緒だと思っています。そのプロセスではいろんな意見があると思いますが、常に前向きかつオープンな組織を目指していきたいと思っております。

 情報開示におきましては、こういったメディアの皆様をはじめファンの方々、選手の方にも届くように積極的に開示して、よりよい形がどう進んでいくべきかというのは提示していければと思っております。

 最後にビジョンに関するとこで一言だけ言及すると、当然事業としては成り立つように仕組みを作っていきますし、ひいては他の競技団体にとっても希望の光になるような存在になればいいと思っております。さらにはスポーツを通じて社会が良い方向に向かっていたり(社会連携)、もしくは国際交流の良いツールになっていくという形で、求めるべきものも高く持っていきたいと思っております。100人いたら多分90人か99人に笑われるかもしれないですが、やはり目指すところは世界最高峰リーグを目指していきたいと思っております。他の競技団体をあまり言うつもりはないですが、例えば野球のメジャーリーグとプロ野球、サッカーのヨーロッパとJリーグの差を考えるとかなり大きな差が今事業規模で起きている状況です。そんな中、ハンドボールはドイツやフランスが比較的進んでいるリーグだと思いますが、そこまで大きな差はないとは思っております。日本人選手たちが頑張っている所に(海外挑戦をすることも大事ですが)、世界のスーパースターたちが来るような環境になったりというのも目指したいところです。それが絶対できないかといったらできなくはないという環境だと私は認識しております。ですので、求めるべきものは常に高く、競技上においても当然世界最高峰になってほしいですし、ビジネス、社会に対する連携も世界最高峰になっていく存在でありたいと思いますし、そのためにどうやって我々ハンドボール界全体で進んでいかなくちゃいけないかというところを今後皆様含め議論していければと思っております。

 最後になりますけども、やはり注目されてナンボの世界だと思っております。良い事も悪い事でもでもいいのでメディアの皆様にはとにかく取り上げていただきたい。
そして今後オリンピックも近づいてきてますけど、特に選手たちも非常に現場で頑張ってますので、ちょっとでもいいんでぜひ取り上げていただければと思っております。以上です。


<質疑応答>

―記者:バスケットボール(B.LEAGUE)をスタートさせたときと、日本ハンドボールリーグとの違いをどのように認識しているか。また、スポンサー、集客などコロナ禍が収束してない難しい状況下でのスタートであるが、いまどのように考えているか。

―葦原代表理事: 大きくみれば5年前のバスケットボールの状況とかなり近い状況だと思っています。実業団と比較的プロ志向のチームが混在しているという意味においては一緒だと思う。違うのは、バスケットボールはFIFB(国際バスケットボール連盟)からの外圧というか制裁があった状況なので、やらざるを得ない状況であった。一方、ハンドボールリーグの状況は、外圧というかやらざるを得ない状況ではなく、差し迫ったものがあるわけではないというのはかなり大きな違いである。なので、チーム・選手含めて能動的に変えていくという気持ちに変えていいかないと、変えさせられると変えるは質的に異なると思う。

―記者:スポンサー、集客などコロナ禍が収束してない難しい状況下でのスタートであるが、いまどのように考えているか。

―葦原代表理事: コロナ禍での集客については、5年前の状況と大きな違いという意味では1つはあるとは思いますが、ハンドボールの現場がどのようなコロナ対策をしていて、どのような対応をしているのか理解が進んでいないが、4月1日以降、安心安全というのは極めて大事なところだと考えているので、対策を確実に打ちながら進めていければと思っています。

―記者:アリーナ競技間の横の連携、例えばフットサルとかバスケットボールとか卓球とかといった、「横の連携」については考えられるのかと思うが、どのように考えているか。

―葦原代表理事: アリーナスポーツの連携は十分可能性があると思っています。スポーツアリーナ作っても1団体の稼働率は限定的だと思います。例えば、バスケットボールチームがアリーナを持ち始めていますが、365日のなかで30日使うが、あとはコンサートになるというなかで、どのようなコンテンツを作るかという点で皆さん悩まれると思います。そういう意味では、バスケットボールに限らず、バレーボーや他の競技の可能性などもありますが、各々価値向上していかないといけないと思いますし、元々私自身がバスケットボールにいましたが、バスケットボールチームも当然ハンドボールに興味が出てくるのではないかと思っています。日曜日のリリースのあとも、どのような状況かと問い合わせベースできていたりもしますので、スポーツ同士が連携して日本のスポーツを盛り上げていければ非常にうれしいと思います。

―記者:5年前のバスケットボールでプロを志向しているチームと実業団であるチームと混在している状況から、一気にプロリーグになっていたわけですが、ハンドボール日本リーグを将来的に、例えば5年後、10年度リーグとしてどのような姿勢を示していきたいと考えているか。

―葦原代表理事: 多くの方が「今後プロ化をしていくのか」というのは一番お聞きしたいことの一つだとは思うのですが、正直まだ何も考えていないです。というのは、プロ化も当然1つの選択肢ですが必ずしもプロ化だけが唯一の正解でもないです。まずは先ほども申し上げた通り、現状何が課題でどんなことが起きているのか私は全く分かってないので、まず全部課題を目の前に出して、課題の優先順位をきっちりつければ自ずとどういうシステム、どういうリーグにしていかなくちゃいけないかが整理されていくと思っております。答えとしてはプロ化もありますし、今の併存するやり方もアマチュア型もあるでしょうし、海外のリーグを見ても色々なタイプがあります。どんなことに課題意識があり、どういう風にしたいかによってモデルが変わっていくので、そこを綺麗に過去の自分の経験や皆さんの知恵をもとに一度整理していきます。課題とかこう進めていくべきだというプロセスもなるべく開示させていただきながら、今後あるべきリーグ像っていうのを作っていきたいかなと思っております。なので今はプロ化に関してはまだ何も決めていないという状況です。

―記者:葦原さんは常勤で、ボランティアで報償が発生するという形でのお立場という理解で問題ないか。

―間野委員長: これまでのハンドボールのことはよく存じ上げないのですが、多くのスポーツ団体と同様に私達は報酬をきちっと支払い、常勤でプロとしてこのハンドボールリーグを改革してくれる方ということで選定いたしました。

―記者:法人として立ち上がった直後で不透明の部分があると思うが、初年度の予算規模はどの程度を想定しているか。

―葦原代表理事: 今まさに協会からリーグを独立させるという段階で事務局の方で現在試算していると聞いております。今後、協会の方を中心に精査をされていくと聞いているので、なるべくリーグの方にたくさん入るといいなとは思っているもののまだ分かっていない状況ですね。

―記者:アマチュアや一般的な実業団リーグは参加チームからの会費が収入の大きな割合を占めているが、(日本ハンドボールリーグにおいても)配分金を配るというよりは基本的には会費を収入にして年間の事業を回していくイメージか。

―葦原代表理事: 仰るとおり基本的には年会費ベースの収入構成になっているとは聞いているので、もちろんスポンサー各社様にご協力いただいておりますが年会費のウエイトは高いと聞いております。

―記者:協会として日本のハンドボールがどういう問題や停滞感があると考え、(葦原さんに)それをどうしてほしいとを伝えたか。また選考委員にどんな人を選んでほしいと伝えたか。

―湧永会長:  日本のハンドボール全体の課題として今私が感じているのは、ハンドボールを「する」「見る」「支える」方々に対してまだ多くの価値を提供できていないことだと思っております。価値というのはいろんな表現がございますが、そこの改善のために「マイハンドボール」という競技登録システムの導入を新たに進めているところでございます。さらに、「見る」に関して言えば、リオオリンピックにおけるハンドボールの観客動員数はサッカーに次ぐ2位でした。世界的に見てもハンドボールというのは非常に見る人に多くの感動や興奮を期待できる、そういったエンターテイメント性あふれる競技だと私は思っておりますが、それがまだ日本の中ではまだまだ十分ではないというところがございます。日本の最高峰となる日本ハンドボールリーグが率先してハンドボールの価値、特に見ていただく価値をお客様に伝えることができれば、ハンドボールのポテンシャルは非常にございますので一気にハンドボールが開花していくと思っております。そういう意味では、リーグの葦原さんと協会もしっかりと足並みをそろえて進んでいくことが重要だと思っております。

―記者:資料に記載の「今後のステップ」について、このステップ3,4の段階に進むまではどれぐらいの時間がかかると考えているか。

―葦原新代表理事:  今後、価値を高めたり、稼ぐまでの期間ですけど、あえて期間は書いてなかったというのは正直なところです。Jリーグがだいたい立ち上げてからプロ化まで、当時5年ぐらいかかっております。B.LEAGUEは1年でそれをやったのですが、正直1年だと結構無理をした部分もありその後細かいところでいろいろな問題が出たりということもありました。できれば、丁寧なコミュニケーションをしながらじっくりある程度(時間を)かけたいなって思いはあります。一方、やはり変革のスピードを求める声も当然出てくると思うので、なるべく早く方向性みたいなものはご提示できればと思っております。なぜあえて期間を書かなかったかというと、(受諾してから)1月下旬から実質2週間ぐらいで本当にまだ何も分かってない状況だからです。現場の選手やチームの方が様々な意見があるとは聞いているのですが、どれくらい温度差が離れてるのかというのが、全く実感がない状況です。その温度差によってかなりコミュニケーションにかかる時間がかかるかもしれないですし、逆にすんなりと早いタイミングで大枠のコンセンサスを取れて進めるかもしれないのでちょっと温度感が全く分からなかったのであえて期間は提示させていただいてないです。気持ちとしては半年~1年ぐらいを目途に何らかの方向性を提示できればいいなとは今は思っておりますが、それ以上遅くなったりしたら「色々な意見があるだろうな」と思っていただければよろしいでしょうし、それが早くなれば「みんなバラバラって思いながら実際は(思いが)かなり近かったのだな」と認識いただければと思っております。

―記者:そもそもこの選定委員会というのは12月に発足したのか。またいつオファーがあったのか

―間野委員長:  12月に立ち上げ、2回会議を行いました。1回目の会議では基準や要件を定め、それに合う方を私どもでピックアップし評価をいたしました。選ばれなかった方もいらっしゃいますので、本人たちに打診することなく様々な情報収集をした上で、3人を比較選考させていただいて2回目で第一候補者として葦原さんのお名前を選考委員会で出しました。そして全会一致で認められた直後に葦原さんには就任の打診と依頼をいたしまして、その後、湧永会長から実際に葦原さんにも会っていただいて説明をしていただきました。極めて短期間の中での選考でありましたけれども、弁護士や税理士、あるいはチーム関係者にも入っていただきました。(葦原さんは)この要件、基準すべてを満たしているわけでは実はございません。例えばハンドボールの選手の経験はありません。評価項目に重みはつけなかったのですが、ここで言う「◎」の数が最も多い方ということで葦原さんを選考させていただいたという経緯がございます。

―記者:葦原さんを選考して直後に打診したというのはいつ頃か。

―間野委員長: 1月下旬、29日あたりです。

―記者:葦原さんが依頼を受けて受諾するまでの期間はどれくらいだったのか。

―葦原新代表理事:  最初お話をお伺いして、当然即断はできなかったので2、3日かかりました。基本的には他の方に相談すると情報が漏れてしまうので自分の中で整理して、資料にもある通り色々な情報を調べながら決めていきました。就任の理由を資料では理屈っぽく述べましたけど、もうひとつやっぱりソフトな話があって、この打診を湧永会長にいただいた時に10ページぐらいのパワーポイントの資料で結構熱くご説明していただきました。ハンドボールのポテンシャルや会長が考えていらっしゃる問題意識、そういった話を聞く中で僕の中に「もし役にたつものがあるならば」と思いが出てきたというのはあります。そういう意味では(結局は「人と人の関係」だと思うので)そこでスイッチが変わったと思っております。

―記者:打診を受けたのが1月29日頃ということは、男子世界選手権は観戦していらっしゃったか。

―葦原新代表理事: はい。元々報道でもたくさん取り扱っていただいたというのもありますし、当然選手たちの頑張っているところは観たかったので。

―記者:2、3月に日本リーグの視察予定はあるのか。

―葦原新代表理事: はい。先週恥ずかしながら初めて、三重に女子の試合を観に行かせていただきました。今後は来週も予定をしており、3月のプレーオフもスケジュールの都合上全日程は行けないのですが、行こうと思っております。実際の就任は4月1日からなので、それ以降は先程も申し上げた通り全チームを回ってご挨拶させていただければと思っております。

―記者:主なスポーツの関わり(自身がプレー経験)について。

―葦原新代表理事: 元々私は野球をやっていました。高校までやっていましたが下手くそでレギュラーにもなれず、とても野球やってたとは言えないレベルです。バスケットボールも仕事としてはやっていますけど当然やったことはなく、ハンドボールもないという状況ですね。「レミたん」ぐらいしか数週間くらい前まで知らなかったぐらいです。

―記者:「世界最高峰リーグ」を目指すにあたり考えている手法というものはあるか。

―葦原新代表理事: 私は常に、ハンドボールに適しているかどうかは別として、アメリカのビジネスモデルというのは長年気にはしていました。具体的には閉鎖型(昇降格がない・戦力均等など)、MLS(メジャーリーグサッカー)の「シングルエンティティ」等です。アメリカは同じ「プロリーグ」でも思想も設計制度も全然違うので、その辺りは注目して見てきました。ハンドボールにとって何が適切かというと、4大リーグのやり方をそのまま持ってきてもきっとダメでしょうし日本のハンドボールリーグ流の新しいやり方があると思います。世界のトレンドは意識しつつも日本流に、ハンドボール流にカスタマイズして、いいビジネスモデルが今後構築できればと思っております。

―記者:4月1日に就任して任期はいつまでか。

―葦原新代表理事: 任期は2年ですね。まずは2年しっかり与えた任期をちゃんと全うして、まずは基盤作りだと思っているのでそこをきっちりやっていきたいと思っております。

―記者:任期2年と言うと、今年の4月1日から2023年の3月末までか。

―葦原新代表理事:理事の他の改選期のタイミングもあるので、最終的に私が聞いているのは2023年6月までの認識です。

―記者:オリンピックの1つの顔である組織委員会の会長の検討委員会が開催されているが、出場予定の競技団体のアスリート側の立場として新会長にどういう形になってもらいたいか。

―湧永会長:今回組織委員長になる方は、オリンピック実現に向けて安心安全を踏まえた上でのオリンピックの実現というところに全力を尽くしていただける方がなっていただければと思っております。またハンドボール協会としましても、女子はモントリオール、男子はソウル以来の出場となりますので良い結果を出す、そこに我々は全力を尽くす限りでございます。

―葦原新代表理事:「YES」か「はい」しか言わない日本人だとダメになると思っております。それは何かというと、バスケットボールの時に国際関係の仕事もさせていただく中で一番難しいと感じたのは外国との(今回はIOC)との向き合いだと思っております。なかなかはっきり「ノー」と言えない人達が多く、交渉負けしてしまうことが過去多くのスポーツの事例で多かったと感じています。今回の組織委員会はあくまでもオペレーションを司るところなので、大会が近づくにつれておそらくIOCから無理難題含めてギリギリの話が飛び込んでくると思います。その時に「英語ができる、できない」ではなく、できるものはできる、できないものはできないと、はっきり言える人、ちょっと踏み込んだコメントになりますけどこれが結構大事だと思っております。なぜかというと、バスケットの時もFIBAからの制裁解除後の監視期間中に、例えば(B.LEAGUEのチーム数が)何チームになるかという時に、FIBAからは強い圧力で「12にしたほうがいい」という話がありました。そういった圧力には呑まれがちなのですが、川淵さんは「12じゃなくて18だ。なぜならこれがこうでこうだからだ」と(交渉をしていました)。当然、コミュニケーションが大事なので、協調して基本的に全部うまくやったほうがいいのですが、スポーツの運営においては譲れるものと譲れないものが絶対に出てきます。その時に線引きがきっちりできて、片言の英語でもいいから「できないものはできない」とはっきり言える人は最終的に結構大事になってくるし、今の日本のスポーツ界で求められている人材だと僕は思っております。


(テキスト:JHL広報サポートコミュニティー・伊藤)