大会の見所
第38回日本ハンドリーグ SEASON 2013-2014
大同、オムロンのV3を阻むのはどのチームか
~混戦必至! 第38回日本ハンドボールリーグ~
8月31日・石川での北國銀行-三重バイオレットアイリス戦を皮切りに、2月末までのロングランがスタートする。今年は女子に新しく飛騨高山ブラックブルズ岐阜が参戦し、7チームでの戦いになった。また、女子はプレーオフ進出は上位3チームまでだったが、今期から男子と同じく上位4チームが進むことになった。男女ともに3月8日に駒沢体育館で準決勝を、その勝者が9日に決勝を戦う。レギュラーシーズンは男子2回戦、女子3回戦総当たりで行われる。ほぼ毎週試合が続く日程だが、男子は来年1月に第16回アジア選手権(開催地未定)、女子は12月に第21回世界選手権(セルビア)の開催を控えており、それぞれ約2ヵ月のブレイク期間を設けている。
男子で注目が集まるのはやはりプレーオフ争いだろう。初となる4位からのプレーオフ優勝で2連覇を達成した大同特殊鋼をはじめ、悲願の初優勝を狙うトヨタ車体、リベンジに燃える大崎電気、伝統チーム・湧永製薬の前回上位4チームと、補強で層を厚くした琉球コラソン、新体制で3大会ぶりの出場をめざすトヨタ紡織九州が絡んでくる。さらに、7月の全日本社会人選手権で3位に入った豊田合成もこの争いに加わりそうだ。例年以上に激しく、見応えあるシーズンになるだろう。北陸電力、トヨタ自動車東日本はともに前回は1勝どまり。今期はワンランク上の結果を残したいところだ。
女子では、社会人選手権で好スタートを切ったオムロンが一歩リードする。広島メイプルレッズ、北國銀行ともに多くの主力が引退したため、若返りは必至。社会人選手権で出遅れ、リーグで巻き返しを狙うソニーセミコンダクタ、即戦力が加入した三重バイオレットアイリスまでがプレーオフ行きの切符を争うことになりそうだ。前回全敗のHC名古屋は、まずは勝ち星を狙う。初参戦となる飛騨高山の初陣は9月7日。どんな戦いをみせてくれるだろうか。
今シーズンの幕開けとなる社会人選手権では男子・大同、女子・オムロンが優勝しているが、上位陣の差は紙一重。またレギュラーシーズンとプレーオフでは雰囲気、戦い方は全くの別物になる。果たして、来年3月9日にトロフィーを掲げているチームはどこになるか。
大同特殊鋼
レギュラーシーズン4位からプレーオフを制す劇的な逆転劇を演じた昨シーズン。途中加入してプレーオフで活躍した高景洙へのマークは厳しくなると予想されるだけに、今期は周囲の選手の活躍がより求められる。新キャプテンの地引を筆頭に、勝ち方を知る武田や中堅の岸川、野村らがどれだけチームを引っ張れるか。昨期MVPの守護神・久保(侑)の安定感はリーグでもトップクラス。後方からチームを支える。昨期はスタートダッシュに失敗して最後まで苦しんだ。その反省を活かし、今期は好スタートを切りたいところ。
トヨタ車体
昨期は4大大会ですべて2位と、あと一歩タイトルに届かなかった車体だが、酒巻監督(前日本男子代表監督)が復帰し新シーズンを迎える。さらに昨シーズン、デンマークに移籍した門山も復帰と、選手層は厚くなった。これに加えて確かな成長を見せている石戸、攻守の柱・富田らで悲願のプレーオフ優勝を狙う。長いシーズンを乗り切るために、波の少ない戦いができるか。7月の全日本社会人選手権では、車体らしさが出せず大同、大崎、合成に3連敗で4位に終わった。リーグ開幕までに攻守の細かな修正が求められる。
大崎電気
16戦全勝でレギュラーシーズンを駆け抜けながら、プレーオフ準決勝で大同に敗れた昨期の悔しさを晴らすべく、チーム一丸でタイトル奪還をめざす。キャプテンには新たに岩永が就任し、宮﨑、東長濱、信太、小澤、森ら豊富なタレントに加え、即戦力ルーキーのGK木村、植垣(健)が加入と、さらに選手層は厚みを増した。全日本社会人選手権では準優勝に終わったものの、アグレッシブな変則DFには安定感があった。選手層の厚さ、チーム戦術の浸透具合からも、今シーズンこそ優勝奪還をなんとしても果たしたい。
湧永製薬
エース谷村と新名がドイツへ期限付き移籍し、さらにケガ人続出と苦しい台所事情で9月のリーグ開幕戦を迎えることになる。例年以上に厳しいシーズンが予想されるが、歴史あるチームとしての意地を見せたいところ。カギは湧永の生命線であるDFがどれだけ機能するか。6:0DFの中央を守る新キャプテン今井、日本代表の成田と、経験豊富な志水、松村のGK陣との連携が合ってくれば、失点はある程度抑えられるはず。攻撃陣は昨期で一皮向けた中浦を軸に、チャンスを得た東江、経験豊富な佐藤らで粘り強く得点を奪いたい。
琉球コラソン
昨シーズンは悲願のプレーオフ出場こそ叶わなかったが、終盤戦まで4位争いを演じ、過去最高の5位と、リーグ参戦から年々力をつけている。今年は紡織から松信、湧永から名嘉(伸)が加入し、層が厚くなった。「松信と名嘉(伸)の移籍組が、もっとチームに馴染んでくれば大きな力になる」と東長濱監督が話すように、2人にかかる期待は大きい。チームのベースは昨期から変わらず、運動量豊富な3:3DF。攻守の柱・東長濱、守護神・石田を中心に失点を30点以内に抑えられれば、昨期届かなかったプレーオフの舞台も見えてくるはずだ。
トヨタ紡織九州
新たに白倉監督が就任し、新キャプテンに海道と新体制で3大会ぶりのプレーオフ出場を狙う。アップテンポな試合展開が持ち味なだけに、シーズンをとおして安定して得点が取れる選手がほしいところ。チームの得点源に成長した左腕・鈴木(済)とリーグ屈指の左サイド・村上(秀)の両サイドがいかに高確率でシュートを決められるかがポイントになるだろう。また呉相民がコーチ兼任から選手に専念したことで、キレを取り戻しているのも好材料だ。若手GK下野、DFで中央を守る新人・野田らのフレッシュな活躍にも注目だ。
豊田合成
今期の合成は7月の全日本社会人選手権で湧永、車体を破って過去最高の3位入賞と、上昇ムードにあふれている。選手とともに畠中監督がこれまで積み上げてきたものにプラスして、今期から就任した吉村コーチの存在も大きな刺激になっている。彼の意識づけや戦術の方向性が徐々に浸透することで上位陣にも負けない、勝てるチームになりつつある。組織的なプレーだけでなく、個人技に優れた司令塔・野田、左腕エース・今村の存在も心強い。社会人選手権で得た自信を胸に、好調をキープしてスタートダッシュが切れれば、4位以内も充分可能だ。
北陸電力
第37回大会では2シーズンぶりに白星を獲得して連敗を32でストップし、4期連続の最下位を免れた。今期、長年チームを引っ張ってきたポストの落合が引退したのは大きな痛手だが、その穴を埋める2年目の小川の働きが期待される。ケガも癒え、神田監督は「走力がある」と落合とは違った小川のストロングポイントを活かしたいと話す。またチームの主力にはベテランが多く、神田監督を采配に専念させるためにも、若手の奮起が必要になる。切れ込んでいくプレーが得意なルーキー池上や、成長著しい瀬戸など攻撃面では新しい顔が見られるシーズンになりそうだ。
トヨタ自動車東日本
初参戦した昨期は北陸電力からうれしい1勝をあげたものの、勝ち星を伸ばせず最下位でシーズンを終えた。巻き返したい今期は即戦力として期待される3人が加入し、チームの層が厚くなった。全日本社会人選手権ではそれぞれにチャンスを与えチーム内の競争を促した中川監督。出番を得た新人3人がともに結果を残し、中川監督に大きくアピールした。とくにセンターを任された玉井は小柄ながらも積極性が光り、得点を量産した。この新人たちがチームをけん引する上野、吉田、GK関口らとうまく融合すれば、昨シーズン以上の成績が残せそうだ。
オムロン
国内大会3冠を達成した昨期から、今期はさらに上の4冠をめざす。DFの要だった金且妍、巻が引退したため、DF面に不安があったが、7月の全日本社会人選手権で守護神・藤間を軸に、試合を重ねるごとに安定感を増して優勝したのは、大きな自信になっただろう。引退した2人に代わってDFに入る永田、稲葉と周囲とのコンビネーションが向上すれば、さらにチームとしても安定していくはず。攻撃陣はエース藤井、東濱に加え、ますます存在感を増す司令塔・石立の日本代表トリオで盤石。DFでも出場機会を増やす稲葉らバックアッパーの成長も著しい。
広島メイプルレッズ
昨シーズンはプレーオフ決勝でオムロンに惜しくも敗れたが、女王復活へ大きくアピール。しかし新城、早川の両翼に加え、優勝を知る守護神・堂面が引退してコーチに就任したことで、今期は主力の顔ぶれが大きく変わらざるを得なかった。まずは新キャプテン河田を中心に大前、もしくは増田がトップに出る2種類の5:1DFの完成度を高めたいところ。シーズンの始まりを告げる全日本社会人選手権で、2年目の高橋がスピードで大きなインパクトを残したのは好材料だ。ケガで戦列を離れているポストの高山が復帰すれば、ワンランク上のチームになれる。
北國銀行
マルチプレーヤーの小野澤、日本代表でもゴールを守っていた田代、キャプテン若松とチームを支えたベテランが揃って引退した。それでも、7月の全日本社会人選手権では多くのメンバーを入れ替えて臨み、準優勝と一定の結果を残した。中でも、ベストセブンに選ばれたルーキーの横嶋(彩)はカットイン、7mスローで大活躍。姉の横嶋(か)とのコンビネーションも良好で、今期の大きな武器になりそうだ。さらに塩田、鰍場、田邉など力のある若手に勢いがある。その勢いに上町、小松らの経験をミックスできれば、これまでとは違った北國が見られそうだ。
ソニーセミコンダクタ
シーズン途中から左腕エース山野を欠いて、4位と苦しんだ昨期。今シーズンは2年ぶりのプレーオフ行きをしっかりと確保したいところ。チームの精神的な支柱であるキャプテン髙橋はもちろんのこと、古川、藤井らバックプレーヤー陣の出来がカギになる。全日本社会人選手権では流れに乗れず5位と出遅れただけに、日本リーグでは巻き返したい。開幕戦は広島、2戦目は三重と社会人選手権と同じ対戦相手なだけに、小薮監督はリベンジ、そして好スタートを切りたいと燃えている。ソニー得意の走力を活かしたハンドボールを展開し、開幕から流れに乗りたい。
三重バイオレットアイリス
攻守に活躍できる原、クレバーな左腕・池原、次世代の守護神候補・山根と日本代表の3選手が揃って加入した三重は、攻守で1段ずつレベルが上がった印象を受ける。ここ3シーズンはHC名古屋からの勝利のみだが、7月の全日本社会人選手権ではソニーに勝利して4位と、上々のシーズンのスタートになった。この好調を維持して北國との開幕戦に備える。今期は上位陣からの勝ち星も期待できそう。昨期とはひと味もふた味も違うところを見せたいところだ。また、名古屋から加入した阪本の存在も大きく、ポストの選手にいい刺激を与えそうだ。
HC名古屋
昨期は白星にあと一歩まで迫るも、15戦全敗で6期連続の最下位に沈んだ。6人がチームを離れ、新たに7人が加わって迎える今期は『当たる』『走る』『ふりほどく』をテーマに「ディフェンス、速攻でオフェンシブにイメージチェンジを図りたい」と意欲をみなぎらせる田中チームマネージャー。質を落とすことなく、ベンチ入りの16人をフル活用してアグレッシブに動き回り、まずは第35回大会途中から続いている連敗(38)に終止符を打ちたいところ。HC名古屋として再スタートしてから10年の節目でこれまでの流れを大きく変えたい。
飛騨高山ブラックブルズ岐阜
今期から初参戦。チームの母体は、昨年の地元・岐阜国体を目標に強化してきたHC高山になるが、登録メンバー13人中、半数以上の7人が新加入。新しい選手が多いだけに、連携をどこまで高められるかがポイントとなる。また、ほかのチームに比べて、経験不足は否めず、初陣まで不安な要素は多いが、キャプテンで、地元出身の池之端の活躍に注目したい。苦しいシーズンが予想される中、山川監督は「不安、期待、責任をこれまでの何倍も感じている」と話し、「プレー面、メンタル面ともに弱い部分の底上げを」とリーグで戦えるチームの土台作りを進めている。